建築生活

こんな私の生活でも、興味を持ってくれる人がいたので、ブログを書くことにしました。

建築計画Ⅰ 数字で測れないストレス

 

 

建築計画Iは、森傑先生の建築の心理学っぽい授業です! 

環境移行というストレス

今回の授業は、環境とストレスについての話から始まりました。人と物との関係はとても深いんです。

環境移行という言葉があります。身近なところでいうと一人暮らしのスタートで、震災による住居移転も環境移行です。

しかし環境移行では大きなストレスがかかる(PTSD)場合があり、阪神・淡路大震災では、仮設住宅での孤独死、自殺が多発しました。

 

老人ホームに住み始めるのも環境移行の一つです。老人ホームについての研究は、日本よりもアメリカの方が先です。アメリカでは共働きが多いことが背景にあります。初期の老人ホームは、病院のような環境でした。しかしその結果、インスティテューショナリズム(施設病)、例えば認知症が進んでしまいました。

それから、室名を番号ではなく〇〇さんの部屋にしたり、自宅で使っていたものを持ち込んだりなどの工夫がされるようになりました。

 

精神のリカバリについては、お葬式は誰のためにあるのかという話があります。

どこの文化でも、人が亡くなった時に何をするのか決まった手続きがあり、それらを行うことで、残されたものが心のリカバリをしていくと考えられています。

 

いずれ出ていくだろうと思って部屋をしつらえない応急仮設住宅でも、精神のリカバリをする現象があります。法律上は1年間、国が貸している仮の住まいなので、手を加えてはいけません。しかし、仮設住宅を被災者自身が、溜まり場を作ったり看板を立てたり庇を作ったりすることには、目をつぶっています。それらが精神のリカバリになるとわかっているからです。居住者が作るということが重要なので、東日本大震災でも建築学生と教員が参加して一緒に作る活動が多く行われましたが、被災者の意思を尊重しました。

 

仮設住宅のカスタマイズの例は、「仮設のトリセツ」という本に多く載っています。

 

グループホーム仮設住宅では、そもそも被災した時点で施設にいた人が多く、普通の仮設住宅では満たせないという課題もありました。

また、東日本大震災の時は、県外避難も多く見られました。津波だけでなく、原発のために住む土地を奪われたため、たくさんの人が札幌、北海道に来ました。

 

ここから単語が続きます。

 

・CPTED(防犯環境設計)

犯罪が起こりにくい設計。

 

割れ窓理論

窓が割れている建物を見ると、割ってもいい空間に見えてしまう。すぐにリペアすることで防げるという論。

 

・サードプレイス

2、30年くらい前から、現代にはサードプレイスがないと批判され始めました。ふファーストプレイスが自宅、セカンドプレイスが大学という感じです。

若者が渋谷のコンビニで、中学生が公園で集まっていることが問題視され始めました。

そして放課後に行ける公共施設を作る動きが生まれました。

 

札幌はサードプレイスにあまり困らない都市ですが、3000~5000人規模の街だと、サードプレイスを見つけづらくなります。コンビニもひとつくらいしかありません。

田舎の方がサードプレイスが必要なのかもしれません。

一方で、2次テリートリーに関わる問題があります。行きつけのカフェのいつも座っている席は、「自分の場所」という感覚ができ、他の人が侵入してくることを不快に思います。

 

パブリックスペースでは、

・同愛着を持てるのか

・それぞれの人のテリトリーが重なる問題をどうするか

を考える必要があります。

 

 

好みは文明によるものか、文化によるものか

森先生は学生の時貧困生活をしてソーメンばかり食べていたので、実家に帰って何が食べたいか聞かれても、カレーくらいしか浮かばなかったそうです。

欲求には、文明的側面と文化的側面があります。スリランカでは集合ベッドが使われ、外部の人が個室のアパートを提案しても、集合ベッドが選ばれたそうです。

文明的な理由で、ソーメンの話と同様、アパートというものを経験したことがないからかもしれませんし、文化的な理由で、集まるのが好きだからかもしれません。

マズローの、欲求階層が満たされないと次の階層の欲求が生まれない理論もあるし、カスタマイズを引き出すのも良いし、住めば都という言葉もあるし…

 

何れにせよ、自分たちが良いと思っているものが良いのかと疑問を抱かせるスリランカのベッドのお話でした。

 

 

うるさい音ってなんだろう

最後に環境ストレスの話になりました。

ここでいうストレスにはネガティヴな意味はありません。

 

混雑時のストレスには、物理的なデンシティと、社会心理的なクラウディがあります。

例えば異性と二人で教室にいる状況に、後から男女5、6人が入ってくると、密度は高くなったのにストレスは低くなります。

 

子供の足音が響くマンションでは、子供がいる人は、子供が走るのは当たり前と思えます。また走っている男の子を知っているとさらに気になりません。

つまり騒音は、デシベルだけでなく対人関係、社会関係によるのです。

→予測可能性、制御できるか、音の意味(締切前の時計の音とか)、人間関係

 

先生の小話 

最後に、わざと無力感を生む建築として、刑務所が立派すぎるという話になりました。

特にヨーロッパは、人権を背景に刑務所がゴージャスになってきており、それはやりすぎだとも思いますが、そもそも刑務所は劣悪な環境による更生ではなく学習性無力感を目指しているのです。